先輩の言葉に背中を押され、いよいよ上司のもとへ。
と言っても上司の出勤は通常社員よりも遅い。
出勤されるのを待つ時間はメールチェックをするふりをしながらひたすら待った。
実際には10分ほどだったはずだが体感は1時間ほどに感じた。
ついに上司出勤
そして、ついに上司が出勤してきた。
ちなみに僕の上司は女性だ。
僕のいる会社は8割が女性で男性はあまりいない。
なので上司が女性であることは決して珍しくはない。
その上司が出勤してきた、とはいってもすぐにはいかない。
さすがに出勤早々、上司もメールチェックなどやることがあるだろうから、それが終わるのを20分ほど待った。
その間の僕は変わらず仕事をしているふり。
とてつもなく冷や汗が出て、心臓もバクバクしていたのを覚えている。
そしてついに上司の手がとまり明らかに休憩モードに入ったのが確認できた。
勇気を出して歩を進めた。
勝負の時
上司「うん。大丈夫?二日続けて休むなんて珍しいね。心配したよ。娘さんから風邪でも移された感じ?」
明らかに上司の顔が真剣モードに変わった。
さあ、ここからが勝負だ。
頑張れ!自分。
抑えていた会議室に二人で迎い、二人っきりの状態を作って話始めた。
上司「そっか……無理させてたんだね。こちらでも気づかず申し訳なかったね。」
上司「いやいや。仕事なんてどうとでもなるから気にしなくていいよ。こういうのは早い方がいいから。今日はもう簡単な引継ぎだけすまして早くあがりなさい。上にも伝えておくから明日から休養にしましょう。」
意外なくらいあっさり休職の許可が下りた。
正直拍子抜けしたけど、先輩や上司、そして同僚の方々に本当に感謝の気持ちでいっぱいになった。
同時に申し訳なさでもいっぱいになったけど。
その日は引継ぎのみに集中した。
当たり前だが、ここ半年間山のように仕事をしていたのだ。
引継ぎ事項を作るだけでもすごい時間がかかった。
けれでも明日からはこれらに関わることがなくていいと思うと少しほっとした気持ちもあったが、やはり一つの引継ぎ資料としてみると、
と思わずにはいられなかった。
引継ぎ説明開始
この時点で翌日から休職することを知っているのは上司、最初に話した先輩、それに上司の上司と僕にいつも指摘をくれていた先輩のみ。
上司からはみんなが動揺するので今日は何も言わずに帰りなさいとまでかん口令を敷かれていた。
一通り引継ぎ資料を完成させて、どの業務をどの方にお願いすべきかまでまとめて直属の先輩と優しい先輩に渡し、許可をもらった。
当然私一人の業務を誰かひとりがかぶるわけにはいかないので、他の同僚を何人も巻き込んで分担されていた。
そこは本当に申し訳ないと感じていた。
そしてついに退勤の時
19時には会社を後にした。
ちなみに他の同僚たちには私の方からは伝えず、翌日上司から事情を説明されることになった。
周りから見ればいつもどおり退勤しているように見えただろう。
申し訳なさを抱えながら帰路についた。
帰路から帰宅
これまで帰りの時間はその日あった業務のこと、明日の業務のことで頭がいっぱいでとても家庭のことを考えられるほどの余裕はなかった。
けれどこの日は違った。
休職の許可が下りたことへの満足感。安心感。ほっとした気持ちがとても大きかった。
家に帰宅すると、妻からは最大級のお褒めの言葉をいただけた。
明日からは会社へはしばらく行かなくていい。
仕事のことも考えなくていい。
ただただ休むこと、家庭のことだけ考えて、
まずは体調面、精神面を通常の状態に戻すこと。
焦らずにゆっくり、自分のペースでいい。
そのことだけを考えて、その日は久しぶりに普通に眠りにつくことができた。
第13話へ続く
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